ファレイヌ2 第30話「挑戦」後編 10 事件後 「ほら、やっぱり俺の言うとおりになっただろ」 早見は爆発で散乱した美佳の部屋を見回しながら、言った。 「ふん、大きなお世話よ」 美佳はムッとした顔で言った。 美佳の部屋はすでに警察の現場検証を終え、早見とエリナ、美佳 の三人になっていた。「これからどうするんだ。もうこの部屋には いられないだろ」 「ナオちゃんのところにでも行くわ」 「ナオちゃん……ああ、牧田警部のことか。しかし、そいつは危険 じゃないか」 「どうしてよ」 「君が彼女の家に行けば、今度は彼女の家がやられるぞ」 「ナオちゃんの家はオートロック式のマンションよ。鷹森だって簡 単には侵入できないわ」 「しかし、鷹森はプロだ。どんなに防犯設備の整ったマンションだ って、必ず侵入してくるぞ」 「じゃあ、あんた、私たちに野宿しろって言うの」 美佳が腹を立てた。 「そうは言ってないさ。ただ牧田警部のところへ行くよりもいい場 所があるって言ってんだ」 「どこよ」 「俺の家さ」 「早見の家!?」 美佳とエリナは顔を見合わせた。 「黒崎は俺を恐れてる。もし俺の家に鷹森を差し向けて、鷹森が捕 まるようなことにでもなったら、自分の首を絞めるようなものだか らな。一定の抑止効果はあるぜ」 「けど、早見のところには妹の景子さんがいるじゃない。彼女を危 険な目には遭わせられないわ」 「景子なら結婚して、もう家にはいないよ」 「結婚?いつ結婚したの?」 「1年前かな」 「どうして結婚式に呼んでくれなかったのよ」 「どうしてって、君にとっては、妹の幸せな姿を見せるのは辛いこ とだと思ったからさ」「それは……」 「君がそんな心の狭い人間じゃないことはわかってる。でも、俺は 辛かったんだ」 「わかってるわよ」 美佳はうつむいて、言った。 「美佳さん、湿っぽい話は抜きにして、今日のところは早見さんの ところへ泊めてもらいましょう」 エリナが言った。 「まあ、仕方ないわね」 「仕方ないはないだろう」 「あら、嫁入り前の女の子二人が男一人の家に行くのよ」 「俺は刑事だぜ」 「刑事だから安全ってことはないでしょ。何せ女の子を平気で殴る ものね」 「俺は君以外は殴ったことないぜ」 「それってどういう意味よ」 「女の子なら殴らないってことさ」 早見はそう言うと、美佳が怒り出す前に部屋を出ていった。 「全くもう」 膨れっ面をする美佳にエリナはくすっと笑った。 11 酒場 その夜、鷹森は行きつけの酒場でバーボンを飲んでいた。 鷹森は酒豪で普通に飲んでいてもボトル一本は平気で空けてしま う。その夜も鷹森のテーブルに置かれたボトルはすでに半分なくな っていた。 彼には威圧感のようなものがあるのか、彼の近くに他の客はいな い。彼はもう1時間ばかり一人で酒を飲んでいる。その間、口を利 いたのはバーテンに酒を注文した時だけだった。 店の入り口のドアが開いて、一人の客が入ってきた。客は30前 後の地味なワンピースを着た女であった。 女は顔の化粧や香水から大人の色気を漂わせ、服装や仕草からは 人に安心感を与える落ち着いた雰囲気を醸し出していた。 女はバーテンに声をかけた後、鷹森の方へ歩み寄った。 「相変わらず一人で飲んでいるのね」 女は微笑を浮かべて、鷹森に言った。 「ん」 鷹森はちらっと横を向いて、目の前に立つ女性を見上げた。「な んや、あんたか」 「隣に座ってもいいかしら」 「俺の席じゃねえ。好きにしな」 「なら、座らせてもらうわ」 女は鷹森の隣の席に座った。 「何の用や」 「例の物は手に入れた?」 「まだや」 「随分、手間取ってのね。あなたなら簡単に取ってこれると思った けど」 その時、女のテーブルにバーテンが注文のカクテルを置いた。 「ボスの使いか」 「そうよ。ボスは早急に黄金銃を手に入れるようにおっしゃってい るわ」 「ふっ」 鷹森は笑った。 「何がおかしいの?」 「秘書って言う商売は楽でええのぉ。言うだけやからな」 「それは見解の相違というものよ。あなたは殺しのプロかもしれな いけど、私の仕事はできないわ。もちろん、その逆もね」 「相変わらず口は達者やな」 「どういたしまして。それで仕事の具合はどうなのかしら?」 「そうやな」 鷹森が酒を口にしてから、ぽつりと言った。「正直ゆうて、恐ろ しいわ」 「恐ろしい?」 女が鷹森を見る。 「人間って言うのは一度でも命狙われると、その後は不安で不安で たまらなくなるものや。ましてや、平和ぼけした日本に住む二十歳 の女となれば、なおのことや。ところが、あの椎野美佳という女、 四度も命狙われて、全く動じない。いや、動じるところか、俺にく ってかかって来よる」 「場慣れしてるんじゃなくて」 「違うな。あの女の場合、自信や。何かとてつもない強固な自信が あの女から感じられる」 「弱気なのね」 「美佳を脅して、ファレイヌを奪うのは無理やな」 「じゃあ、どうするの?」 「殺す」 「殺したら、ファレイヌの場所がわからなくなるわ。どうせなら、 彼女を拉致して、吐かせるのがいいと思うけど」 「わかっとらんな」 「え?」 「あの女との直接対決では俺に勝ち目はない。仮に仲間を連れてっ てもな。それは静岡の件で証明済みや。美佳の前に現れることがで きないってことは拉致するのも無理ってことや」 「呆れた。あなた、それでもプロ?戦う前からしっぽ巻いて逃げ出 すの?」 「プロだから、わかるんや。あの女は技術や体力はないが、恐ろし いほどの勘と判断力、そして銃の腕前を持っとる。まさに生まれつ いての殺し屋や。秀才はどれだけ努力したところで天才には勝てん 。これは俺の格言や」 「そんな言葉を聞いて、ボスが納得するかしら。今の話、ボスが聞 いたら、あなたはクビよ」 「俺は無駄死にするのが嫌なだけや。椎野美佳から銃を奪うには殺 す以外にない。仮に銃の場所がわからなくなったとしてもな」 「わかったわ。それなら、殺しを許可します。ボスには私から伝え ておくわ」 「オーケー。最初からそれなら楽でよかったんや」 鷹森はニヤッと笑って、言った。 12 相談 同じ頃、美佳とエリナ、早見は、早見の家で食卓を囲んで夕食を 取っていた。 「へえ、エリナさん、料理、うまいんだな」 早見はヒレカツを食べながら、言った。 「そんな……。材料がいいんですわ」 エリナは少し照れた顔をした。 「いや、そんなことないよ。俺が今まで食べたヒレカツの中で一番 おいしいよ」 「そ、そうですか」 「ああ。このご飯だって、おいしいし、エリナさんなら、きっとい いお嫁さんになれるよ」 早見は言葉だけでなく、腹を空かせた子供のように本当においし そうに食べていた。 「エリナ、気をつけた方がいいわよ。これでも、エリナを口説いて るつもりなんだから」 美佳は冷たい口調で言った。 「わたくし、嘘でもうれしいです。人からそう言うふうに誉めても らったことってありませんでしたから」 エリナは笑顔で言った。 「嘘じゃないよ」 早見はお椀をテーブルに置いた。「俺はまずいものをうまいなん て言う洒落っけは持ち合わせてないぜ。これは本当にうまいよ。自 信を持っていい」 「−−だってさ。よかったね、エリナ」 「ええ」 エリナは誉められてすっかり顔が赤くなっている。 「でも、美佳はエリナさんの料理を誉めたことないのか?」 「誉め言葉って言うのはたまに言うから効果があるのよ。早見みた いにね。毎日、言ったら、言葉自体が安っぽくなるでしょ」 「それもそうだが、君は幸せだよ。彼女のようなパートナーがいて 」 「そうかな。私はエリナには早く結婚してもらいたいと思ってるん だけど」 「美佳さん!」 エリナが美佳を見る。 「あら、本当よ。私みたいな危険な人間のそばにいるより、普通の 旦那様のそばにいた方が安心だもの」 「美佳さん、それ本気なんですか」 エリナの表情が真顔になった。 「まあまあ、その話は後にしようぜ。それより、鷹森のことだよ」 早見は慌てて話題を変えた。「奴は近いうちにまた狙ってくるぜ 」 「もう脅しはかけないかもね」 「というと?」 「あれだけのことやって私が脅しに屈しなかったんだもん。今度は きっと殺しにくるよ」「しかし、奴の、いや黒崎の狙いがファレイ ヌなら君を殺すのは得策じゃないんじゃないか。むしろ、誘拐や拉 致に気をつけた方がいいかもしれん」 「あのぉ、わたくしはそれはないと思うんですけど」 エリナが口を挟んだ。「美佳さんを誘拐するのと、逆に美佳さん に返り討ちにあう確率を比較考量すれば、相手にとって後者の方が 確率が高いと思うんです。すでに美佳さんには何度もやられてるわ けですから、そこまでの危険は犯さないと思います」 「そうなると、鷹森の選択肢は私を殺すか、仕事から手を引くか、 ね。鷹森のことを知ってる早見ならどっちだと思う?」 「仕事から手を引くことはないな。奴はプロだ」 「だとすると、私を殺しにくるってわけね」 「もし狙うなら、遠くからだな」 「また爆弾、仕掛けるかもしれないわね。今度は強力な奴」 「早見さん、何とか鷹森を捕まえる方法はないんでしょうか」 エリナが聞いた。 「そうだな、一つ罠を仕掛けてみるか」 「罠?いいわね、どんなことするの?」 美佳が乗り気になった。 「それはだな−−」 早見は美佳に耳打ちした。 美佳はうんうんとうなずき、 「ああ、それいいね」 と言った。 「美佳さん、何なんですか」 「エリナは知らない方がいいかもしれない」 「そ、そうだな」 「ちょっと、二人とも、それはひどいですよ」 エリナは二人の顔を見て、少しムッとした。 13 鷹森の最後 「よりによって、早見の家とはな」 深夜、鷹森は車で早見の家の近所までやってきた。 −−早見の前に姿を現せば、再び警察の指名手配の対象にされち まう。やっぱりさっさと始末しとくんやったな。 鷹森は美佳のスケジュール表を見た。 −−狙えるチャンスがあるとすれば、K遊園地のヒーロー戦隊シ ョーの司会やな。よし、これで行こう。 鷹森はスケジュール表を助手席に投げ、車を発進させた。 翌日の午前10時、鷹森は髭とサングラスの簡単な変装をして、 K遊園地に入場した。 日曜日ということもあり、園内は子供連れ の家族でいっぱいであった。 「これだけの人やと、死者30名はくだらないな」 鷹森の口元が緩んだ。 特撮ヒーロー戦隊ショーは園内の特設会場で行われることになっ ていた。午前11時と午後3時の一日二回である。 鷹森は前日の晩に園内に忍び込み、特設会場の舞台の下にプラス チック爆弾を仕掛けていた。 プラスチック爆弾はリモコン式で半径500メートル以内ならど こにいてもボタン一つで爆発可能であった。 「さて、しばらくは園内で遊ぶとするか」 午前11時、特撮ヒーロー戦隊ショーが特設会場で始まった。舞 台の三分の二を囲むように作られた客席は子供連れの家族で満杯だ った。 鷹森は観覧車に乗っていた。 ゆっくりと動くゴンドラの中で鷹森は双眼鏡を通して特設会場を 見ていた。 舞台の上には司会の美佳が挨拶をしていた。 「ゴンドラが真上に来た時が美佳、おまえの最後や。今度の爆弾は 半径10メートルが吹っ飛ぶ本物の爆弾やからな」 鷹森はリモコンを手にした。 壇上の美佳は何も知らずに笑顔で客席に向けて応えている。 鷹森の乗るゴンドラがちょうど真上に来た。 「これで終わりや」 鷹森はリモコンのボタンに親指を乗せた。 グォーン!!! その時だった。 一発の光弾が鷹森のリモコンを破壊した。 「なにぃっ!」 鷹森は双眼鏡を下ろし、周りを見回した。 ゴンドラの窓に小さな穴があいている。 鷹森が立ち上がり、その窓から隣のゴンドラを見た。 「おまえは……」 隣のゴンドラには黄金銃を構えた女が立っていた。 「バカな、おまえが椎野美佳。じゃあ、あそこで司会してるのは… …くそぉっ」 鷹森はすぐに懐から拳銃を抜いた。 バシッ!! しかし、美佳のファレイヌがすぐに鷹森の拳銃を破壊する。 鷹森は右手を押さえながら、その場を動けなくなってしまった。 「ちっ、このままじゃ、終わりや」 鷹森はゴンドラのドアを蹴破った。 そして、ポケットから手榴弾を取り出すと、ピンを抜いた。 「美佳、貴様になんかやられへんど。俺はプロや。男の死に様、見 せたる」 鷹森は大声を上げ、ゴンドラから飛び降りた。 美佳がはっと見つめる。 鷹森は地面に激突する瞬間、爆発した。 「何も死ななくたって……」 美佳は地面を見下ろしながら、ぽつりとつぶやいた。 14 事件後 鷹森の爆死から2時間後、美佳はエリナと園内のファーストフー ドの店で食事をとった。 鷹森の自殺を目の前で見てしまったせいか、美佳の顔色はすぐれ なかった。注文したハンバーガーにもほとんど口をつけていない。 「美佳さん、大丈夫ですか」 エリナが心配そうに言った。 「え?何か言った?」 美佳が一度目をぱちくりさせて、エリナを見た。 「顔色、悪いですよ」 「ああ、大丈夫。少しショック受けただけだから」 「まさか、自殺するなんて思いませんものね」 「エリナ」 「はい」 「私ってそんなに相手を追いつめてるのかな」 「さあ、それは−−」 「私はできる限り相手を殺さないように心がけてるのに、相手が自 殺しちゃったんじゃ、結局私が殺したのと同じことでしょ」 「そんなことありませんわ。美佳さんぐらいファレイヌを有効に使 ってる人はいませんもの」 「でも−−」 美佳は何か言いかけて、言葉を切った。 「でも、何ですか」 「今回は失敗だったと思う」 「そうですね。一つ間違えれば、ヒーローショーを見に来た子供た ちを巻き添えにするところでしたものね」 「うん」 「でも、美佳さん、鷹森が愛子さんのことを美佳さんだと思ってる ってよく確信が持てましたね。確かに最初、鷹森は愛子さんを美佳 さんと勘違いして狙ったわけですけど」 「確信があったわけじゃないけど、鷹森が姿を現したのはあの一回 だけでしょ。多分、最初の一回は私の顔を確認するために現れたん だと思う。だから、もしかしたらと思って」「美佳さんらしいです ね」 「けど、私の予想通り、あいっぺを私の代わりにショーの司会に立 たせたら、鷹森も騙されたでしょ」 「愛子さんが知ったら、怒りますね」 「あいっぺのことだから、いいアルバイトだと思って、喜んでると 思うけど」 「鷹森が観覧車に乗るのはどうしてわかったんですか」 「それは簡単よ。この遊園地で会場の中を見渡せるのは観覧車だけ だもの。奴が爆弾のスイッチを押すとすれば、観覧車以外にあり得 ないわ。会場じゃ自分が危険だしね。だから、観覧車をずっと見張 ってれば奴が現れると思ったのよ」 「鷹森が会場に爆弾を仕掛けるって言うのはどうしてわかったんで すか?」 「これはデータよ。早見の話だと、鷹森はライフル射撃による殺し の例はほとんどないのよ。大半が爆弾テロか、至近距離からの暗殺 。鷹森は私との直接対決は嫌ってるから、自ずと爆弾テロしか考え られないでしょ」 「でも、会場に仕掛けるとは限らないじゃないですか?」 「そんなことないわよ。この先四日間を見ると、私の仕事はこの遊 園地の仕事一本だけだもん。早見の家にいる分には鷹森も手出しで きないから、狙うチャンスがあるとすれば今日しかないのよ」 「仕事がないのが幸いしたってわけですね」 「情けない話ながらね」 美佳はため息をついた。 「ため息なんかついてる場合じゃないですわ。今日の仕事をキャン セルしたおかげで、ヒーローショーの仕事は愛子さんが受けること になってしまったんですよ」 「それは今日だけでしょ」 「いいえ、来週からも愛子さんに決まってしまいました」 「え、うそぉ」 「まあ、仕方ないですね」 「あいっぺの奴ぅ」 「愛子さんのせいではなくて、美佳さんのせいなんですけど」 「あっ、それもそうね。まあ、こんな時もあるわよ」 美佳は笑ってごまかした。 「全くいつになったら平穏な日々がやってくるんでしょうか」 「いいじゃないの。退屈な毎日より少しぐらい刺激があった方が」 「それじゃあ、今後、しばらく一日一食になりますけど、大丈夫で すね」 「げっ、そんなの冗談じゃないわよ」 「美佳さんは刺激があった方がいいんでしょ。お腹が減れば、ハン グリーな気持ちになれますわ」 「あのねぇ、私はボクサーじゃないのよ。食事減らすなら、エリナ の銭湯へ行く回数、減らしなさいよ」 「どうしてわたくしの楽しみを美佳さんの食事のために減らさなき ゃいけないんですか?」 「そんなの当然よ。我が家の家計は私の働きで成りたってんのよ」 「成り立たせる仕事を取ってきてるのはわたくしですわ。下げたく もない頭を下げて、仕事を取ってきてるんですから」 「エリナがマネジメントしなくたって、仕事ぐらいくるわよ」 「絶対来ません」 「来る!」 「来ません!」 美佳とエリナはつまらないことで周りに人がいるのも気にせず喧 嘩を始めてしまった。 美佳たちの席から離れた客席で二人の女性 がその様子をおかしそうに見ていた。 「あの二人はいつ見ても、おもしろいネ」 ゆうきが遠くの美佳とエリナを見て、言った。 「でしょ、でしょ。私も早く先輩たちの仲間入りがしたいんだ。私 ね、先輩とエリナさんと一緒に暮らすのが夢なの」 愛子が目を輝かせて言った。 「あなたが元ファレイヌであることを明かせば、仲間に入れてもら えるかもヨ」 「そんなのやあよ。違う目で見られるもん。ゆうきも私のこと、先 輩やエリナさんに言っちゃ駄目だからね」 「わかってる、わかってるネ。だから、ソフィーにもあなたのこと 、話してないヨ」 「よかった」 「でも、ソフィーが言ってたけど、いつ愛子のところにもカイルが 来るかもしれないネ。その時はどうするネ?」 「ううん、わかんない。その時になったら、考える」 「その時では遅いと思うけど」 「いいじゃない。だって、私、今が一番幸せなんだもん」 「幸せ……いい言葉だネ」 ゆうきはカイルの魔の手が迫るこれから先に少しだけ不安を感じ たのだった。 「挑戦」終わり